積読を消化したい。

絶版を恐れるあまり、積読ばかりが増えてしまったので読書のモチベーションを上げるために開設しました。読んだ小説の感想を書いていきます。

館シリーズオマージュ『硝子の塔の殺人』知念実希人 著 ネタバレあり感想

知念実希人さん著の「硝子の塔の殺人」を読みました。
館シリーズ」リスペクトな作品で面白そうだったので手を伸ばしました。

感想を先に述べると、読んでいる時のリーダビリティは凄かったのですが、オマージュとメタミステリが強すぎて「他人のふんどし」感が強かったです。
本格ミステリ」ではなく「メタミステリ」「バカミス」だと思いました。

 

雪山の奥に建造された「硝子館」が舞台です。
その家主の神津島太郎はノーベル賞候補にもなるほど医学で成功している人物。
また大のミステリマニアで「硝子館」も綾辻行人さんの「館シリーズ」にインスパイアされ建てました。
そして「ある発表がある」と言い、硝子館に知り合いを集めました。


登場人物の多くはミステリマニアで古今東西のミステリ作家、ミステリ小説の名前が登場します。
登場人物同士のミステリ談義でクリスティ、カー、クイーンといった古典から新本格に関わる島田荘司さん、綾辻行人さん、近年では「屍人荘の殺人」の名前まで出てきます。
本作で挙げられた作家、小説は多く挙げたらきりがないので割愛したいです。

他作品のネタバレ
辻真先さんの「仮題・中学殺人事件」「9枚の挑戦状」
深水黎一郎さんの「最後のトリック」
森博嗣さんの「すべてはFになる」
のネタベレがあったのでこれらの作品を未読の方は注意です。


綾辻行人さんの「館シリーズ」のオマージュが非常に強く、読む前に「十角館の殺人」だけでも良いので読んだほうが良いと思います。

 

ここからネタバレで不満だったことを書きます。伏せ字です。

神津島太郎の発表とは硝子館を舞台にした、自分が書いたミステリ小説「硝子館の殺人」を実際に行ってみるというものでした。
作中作を実際にするという、そのこと自体はプロットとして良いのですが、神津島太郎のミステリ小説は作中の登場人物から「オリジナリティがまったくなければ文章力も皆無」「どこかで見たシチュエーション。どこかで見た名探偵。どこかで見たトリック」等、酷評されています。
「じゃあそのボロクソな作中作を元にした事件を300ページぐらい読んでた読者(私)はいったいなんなんだ…」と正直思いました。
上記の酷評が知念さんの言い訳や逃げに感じてしまいました。
神津島太郎は作中で「綾辻行人になりたかった。」と言っています。
それは知念実希人さんの言葉でもあるんでしょうか?
そんな作中作に対して卑下たことを言わずに、館シリーズの11作目に割り込めるぐらい自身のある作中作で勝負してほしかったです。

 

不満だったことが多いですがリーダビリティは凄かったです。
熱中して楽しく読んだゆえの不満点です。
次はメタなしのストレートな本格ミステリを書いて欲しいです。