積読を消化したい。

絶版を恐れるあまり、積読ばかりが増えてしまったので読書のモチベーションを上げるために開設しました。読んだ小説の感想を書いていきます。

『火喰鳥を、喰う』原浩

今更ながら2025年に映画化されたりと話題になっていた作品を読み終えた。

当時(今も?)流行っていたホラーと考察系が合わさった小説な印象。
序盤は故人の戦友に話を聞きに行ったりとミステリー色を感じるが後半になるとミステリー要素はきれいさっぱり消え去りホラー、オカルト、SF色が一気に濃くなる。

特殊設定ミステリーや「リング」のような序盤ですが中盤からは仕組みが謎の圧倒的な超自然的、超常現象に押し潰されるのを楽しむホラー小説に変わる。
駆け引きを楽しんだり真相に迫るSFホラーミステリーとしては「唯一、突破口を知っていそうな北斗が敵か味方かわからなかったものの中盤で主人公と衝突し味方になったと思わせておいて、嘘はついていないような気がするもののやはり敵だったというのは」アンフェアでしょう。

謎は謎のまま終わり考察しがいがありそうだがロジックも謎のままなので考えたところでどうしようもない気もする。

不満点ばかり書いてしまった気もするが、ホラーミステリーとしては上述の不満点を感じただけで、純ホラーとしては色々な人の感想を聞いてみたくなる小説で話題になったのも納得。


かなり違うがなぜかゲーム、クロノ・クロスの「殺された未来が、復讐に来る」というキャッチコピーを思い出した。

 

 

 

『石球城』殺人事件 北山猛邦 ネタバレなし感想

北山猛邦さんの小説を読むのは「『アリス・ミラー城』殺人事件」以来で2冊目。
今年度のミステリーランキングの上位候補という評判を目にして手に取りました。

 

「本作はクレパスに落ちて意識を失った主人公が石球城と呼ばれる出入り口がない城塞都市で目を覚ましたものの、空はずっと真っ暗で星空のない暗黒という自分の住んでいた世界との違いに戸惑いながら石球城の世界を守る巫女が狙われる事件に巻き込まれていく…」

という個人的には世界の謎を解き明かす系のRPGを思い出させる冒頭のあらすじ
13の密室の謎と特殊設定ミステリーが売りな本作ですが私はRPGの話に感じてしまい、そのようなテンションで読み進めてしまった。
この世界独特の習わしによって管理された現状を打破するために主人公達が世界そのものの謎に立ち向かうのは冒険色が強いディストピアもののよう。

ミステリーとしては超絶技巧な物理トリックのオンパレードです。
犯人は金田一少年の事件簿の犯人ぐらい心技体が揃った超人でしょう。
バカミス色がかなり強いですが、そこら中にある謎の石球にちゃんと理由があったり、物理トリックは文章では難しくても図面一発でトリックが理解できた気分になるのはお見事。

 

 

 

『冷たい校舎の時は止まる』辻村深月 ネタバレなし感想

辻村深月さんの「冷たい校舎の時は止まる」を読みました。

本作は講談社文庫から刊行されていてメフィスト賞受賞作ですがミステリー小説というよりも青春小説の割合が非常に多かったです。 
本のページ数に思わず躊躇してしまいますが青春小説として楽しむことができれば一気読みできるリーダビリティがあります。

体感ですが全体の3分の2が登場人物それぞれの回想で悩み、過去を振り返るの繰り返しです。これが中々面白かった。
最近、読んだ恩田陸さんの「ネバーランド」と「球体の季節」とどうしても比べて読んでしまいましたが恩田さんより明確にホラー要素がありイジメといったエグい描写がありスリリングではあります。

ただ著者と同姓同名の登場人物がずっとうじうじしていて読んでいてイライラする方や登場人物達に感情移入、共感できない方には冗長に感じて読むのを挫折するかもしれません。

ミステリーとしてのサプライズはあるものの校舎に閉じ込められている現状を突破しようとする気持ちや行動が登場人物にはあまりないです。
また昨今の特殊設定ミステリーとは違いルールが曖昧で作者の匙加減な気がします。
登場人物達を校舎に閉じ込めたホストを特定する手段も論理よりも動機や感情が優先されていて推理小説として楽しめる箇所が限定的です。

推理小説としては辛口なことを書いてしまいましたが本書全般に緊張感があり一気読みすることができました。
エグい青春小説として楽しめるかどうかが全てだと思います。

 

 

 

『あなたが誰かを殺した』東野圭吾 登場人物メモ ネタバレなし感想

東野圭吾さんの「あなたが誰かを殺した」を読みました。
過去作の「どちらかが彼女を殺した」「わたしが彼を殺した」とは違い犯人が結末で発覚するミステリー小説です。

本作はセレブが集まる別荘地で起きる殺人事件。ページの大半が検証会という尋問が中心で新事実が小出しになっていくというアガサ・クリスティーを彷彿とさせる古典的な王道ミステリー小説です。

登場人物が多いためメモしながら読むことをおすすめします。

 

栗原正則
公認会計士
栗原由美子
青山で美容院を経営。正則の妻。
栗原朋香
正則と由美子の子ども。中学生。北海道の寄宿舎がある中高一貫校に在籍。
久能真穂
朋香の寄宿舎の指導員。

櫻木洋一
病院の院長
櫻木千鶴
洋一の妻
櫻木理恵
洋一と千鶴の娘。洋一が経営する病院で事務員として勤務している。
的場雅也
理恵の婚約者。櫻木洋一の病院で勤務している内科医。

山ノ内静江
40代ぐらい。夫とは6年前に死別。
鷲尾春那
山ノ内静江の姪。看護師。
鷲尾英輔
春那の夫。薬剤師。

高塚俊策
会長と呼ばれている。なんの会長なのかは書いてなかった気がする。
高塚佳子
俊策の妻。グループ会社の居酒屋チェーン店を経営。

小坂均
高塚の元で働いていたところから別の会社にヘッドハンティング→倒産→出戻り
なため高塚夫妻には頭が上がらない。
小坂七海
均の妻
小坂海斗
均と七海の息子。小学6年生。

榊
地元の警察官。刑事課長。
金森登紀子
春那の先輩。看護師。シリーズの登場人物。
加賀恭一郎
主人公。警視庁捜査一課所属。

 

 

 

『ヴァンプドッグは叫ばない』市川憂人 ネタバレなし感想

市川憂人さんの「ヴァンプドッグは叫ばない」を読みました。
2021年に短編集「ボーンヤードは語らない」があったものの長編としては2018年の「グラスバードは還らない」から5年経ての長編新作です
本作は「現金輸送車襲撃犯」と「脱走した21年前の殺人鬼、吸血犬(ヴァンプドッグ) を追う側」の2つの章が交互に進むシリーズではお馴染みの構成です。

脱走した吸血犬を追う章は劇場型犯罪色が強く、前作以上にライブ感が強くリーダビリティがありました。
これまでの作品に登場した人物が現れたりとこれまでの作品を読み直したくなったりもしました。

魅力的な謎がある反面、解決編は荒削りでやや煩雑だった印象を受けてしまいました。
微ネタバレのため伏せ字
ウイルスの症状についての科学的根拠が少なく状況消去が多いこと(特殊設定ミステリとしてルールが曖昧?)
本格推理小説というよりもSF医療サスペンスという言葉が合う小説だと思いました。
角川ホラー文庫な読み心地でした。

 

 

 

 

 

ヴァンプドッグは叫ばない 〈マリア&漣〉シリーズ (創元推理文庫)

ヴァンプドッグは叫ばない 〈マリア&漣〉シリーズ (創元推理文庫)

 

『地雷グリコ』青崎有吾

青崎有吾さん著の「地雷グリコ」を読みました。

「じゃんけんのグリコ」「坊主めくり」「じゃんけん」「だるまさんが転んだ」
「ポーカー」といったお馴染みのゲームに新しい要素を加えたゲームで学園祭の場所決めといった日常のなにかを賭けて勝負するゲーム小説です。
ルールは複雑なところがありますが、ちょうど良いタイミングで図があるため「小説より漫画向きそう」というハンディは感じませんでした。

私が知らないだけかもしれませんがギャンブルやゲームを題材にした小説はあまりないと思います。
ゲーム色の強い小説があっても殺伐としたデスゲームものに落とし込まれがちですが、本作は青春ミステリー小説として爽やかに進行していきます。
後半になると金銭を賭け殺伐として「賭ケグルイ」っぽくなるのが残念といえば残念です。

登場人物は青崎有吾さんの他の作品の学生のようなノリで軽めで爽やかですが、ゲーム自体は相手を騙す、イカサマもバレなければ良いというのが一貫しておりルールの解釈の盲点を突くことが多いです。
対戦相手の行動予測をドンピシャに当てるところに爽快感がある反面、そんなにうまくいくのか?と思うのも正直なところです。

 

 

 

『鏡は横にひび割れて』アガサ・クリスティー

アガサ・クリスティー著「鏡は横にひび割れて」を読みました。
本作はホワイダニットの傑作でしょう。
トリックなどで本作より優れている作品は数多あるでしょうが、そんなことはどうでも良くなる威力がある一冊です。
ミス・マープルシリーズらしくどこかゆったりとしている一冊なのですが真相に気づいたときには動悸が早くなりページをめくるのが止まらなくなりました。


本作は色々あって他の超有名作品のようにネタバレされまくっている一冊になってしまいました。私は幸いにも避けることができたか目に入っても忘れられたのが幸いです。
迂闊にXなどのSNSやGoogleで検索しないことをオススメします。

「書斎の死体」の現場でもあったゴシントン・ホールに映画女優マリーナ・グレッグとその夫ジェースン・ラッドが引っ越してきて、そのお祝いと野戦病院協会絡みのチャリティーを兼ねたパーティーがゴシントン・ホールで行われる。
パーティーでマリーナの側にいた野戦病院協会幹事のヘザー・バドコックが毒殺される。被害者は殺されるほどの恨みを買うような人ではないと思っているなかマリーナや関係者の証言でマリーナを狙った毒をヘザーが食らったのではとい疑惑が浮かぶ…

というのが本作の冒頭のあらすじです。

本作のミステリーとしての謎は
・犯人はマリーナとヘザーどちらを狙ったのか?
・マリーナとヘザーが会話している時にマリーナが呆気にとられるとも何かに気づいて冷たい表情とかでは表現できない表情をしていたのは何だったのか?
の2本柱になっています。

被害者の人柄が
「すごく親切で周りの面倒見も良い人ですよ…ただうるさいというか…デリカシーがないというか自己中心的だけど自分の話ばかりで他人に迷惑をかけるほどでもないんだけど……いえ別に嫌いじゃないです!」(意訳です)
というキャラ付けが絶妙で読者の多くの方が実生活で接したことがあるどこかの誰かを思い浮かべそうなのが面白く絶妙です。

本作はネタバレの被害に会う前に読んでもらいたいのですが、シリーズ一見さんお断りな一面があります。
「書斎の死体」にも登場した「ゴシントン・ホール」が舞台なため本作は過去作を読んだ方向けな小説だと感じました。

「書斎の死体」未読の方には微ネタバレのため伏せ字

作中でゴシントン・ホールのことを「殺人事件のあった邸」と言われかつての住人のバントリー夫人が「死体はあったけど殺人事件は起きていない。殺人があったのは別の場所!」と返答したシーンはニヤリとしました。

本作は変わりゆくセント・メアリ・ミードが裏テーマのためかミス・マープルの日常に大きくページ数を割いています。
個人的には超有能だと思う「予告殺人」「パディントン発4時50分」にも登場したダーモット・クラドックは主任警部へと出世。職場では気を張っているのかミス・マープルと会うと少し愚痴や弱音を吐くところも味がでています。
決して悪い人ではないものの過干渉なところがミス・マープルと反りが合わない介添人ミス・ナイトとのやり取りなど日常シーンが面白いのですがシリーズ初見の方には冗長で不要に感じるかもしれません。