積読を消化したい。

絶版を恐れるあまり、積読ばかりが増えてしまったので読書のモチベーションを上げるために開設しました。読んだ小説の感想を書いていきます。

『警視庁草紙』山田風太郎

山田風太郎さんの「警視庁草紙」を読みました。
西南戦争前の明治時代を舞台にした連作短編小説です。

本作はミステリー小説にジャンル分けされそうですが、忍法帖シリーズのようにいかに相手を出し抜くかを楽しむ小説だと思いました。

町奉行の隅老齋と旧幕臣の千羽兵四郎が主人公で、警視庁大警視・川路利良らが大事件をめぐり水面下で対決する伝記小説です。
明治維新後に生活が変わり苦しい立場になった人が作品のテーマだと思います。

隅老齋と千羽兵四郎は現政権に対して転覆を狙うような大きなことをするつもりはなく、あくまで「ちょっかい」程度のつもりが助けた人物たちの事情で警視庁から危険視されていきます。

序盤は軽い読み心地ですが上巻の後半になると旧幕勢の企みや明治政府の一枚板ではない派閥争いの色が強くなっていきます。
下巻になると連作短編の色が強くなり過去の短編に登場した人物が再登場することが多くなるためメモりながら読めばよかったです。

実在の人物が非常に多く登場します。
恐らく現在では知名度抜群な藤田五郎斎藤一)が前面に出てこないのが興味深いです。