積読を消化したい。

絶版を恐れるあまり、積読ばかりが増えてしまったので読書のモチベーションを上げるために開設しました。読んだ小説の感想を書いていきます。

マトリョシカまで読んで欲しい。『マツリカ・シリーズ』相沢沙呼 著

先日、感想記事を書いた相沢沙呼さんの『medium 霊媒探偵城塚翡翠 』に続き、
同作者のマツリカ・シリーズ3作を読んだので感想を書きます。

現在『マツリカ・マジョルカ』『マツリカ・マハリタ』『マツリカ・マトリョシカ
の3作が出版されている所謂「日常の謎」を扱ったミステリー小説です。

結論を先に述べると作品を重ねるごとに面白くなっていき3作目の『マツリカ・マトリョシカ』は「日常の謎」と「本格ミステリー」が合わさった名作でした。

クラスに馴染めず内気な高校生、柴山祐希と柴山が通う高校の近くの廃墟ビルに住んでいると自称しているドSな美少女マツリカが主人公です。

主役の紹介と表紙で興味の無い方は手を取らない作品だとは思いますが、先入観無しに読んで欲しいミステリー小説だと思った作品だと思ったため各作品の簡単な感想を書いていきたいと思います。

同じ作者なので当然ですが『medium 霊媒探偵城塚翡翠 』と共通するようなところはありました。
相沢沙呼さんの他の小説に興味を持った方に読んで欲しいミステリー小説です。

 

 

1作目『マツリカ・マジョルカ
学校の怪談話を調査しつつその時に起こった問題を解決していくのが全体の話の流な短編小説です。
両主人公の紹介感が強く短編も一貫されたテーマは感じられませんでした。
マツリカが事件を推理するのですが過去に起こったことを扱ったり犯人が発覚したところで章が終わり、具体的な犯人の動機や過去の出来事の詳細がウヤムヤな感があるのが正直な感想ですが、あえて正解をハッキリさせていない作者の思惑が感じられました。
各章の結末は重くハッピーエンドではない
最後の章の切れ味はなかなかです。

2作目『マツリカ・マハリタ
今作では『1年生のリカコさん』という怪談が4つの短編にチラリと登場するため作品全体に統一感が出ています。
現在進行系だった事件、出来事を扱い事実がハッキリとするためハッピーエンドとは限りませんが前作で感じた「あくまで推測感」はありませんでした。
前作を正当進化させた作品だと思います。

 

3作目『マツリカ・マトリョシカ
シリーズ初の長編小説です。
過去の「密室での傷害事件」と現在の「盗難された制服でのイタズラ」と2つの事件を扱います。
登場人物が事件の推理を進めながら章を進めて、新事実が発覚してまた推理する流れはエラリー・クイーンの国名シリーズを彷彿とさせます。
昨今の密室を扱ったミステリーは緩和状態で変化球が多い印象がありますが、本作は変化球感はありません。
正直、本格ミステリーとして楽しめるのですが、テコ入れというか「日常の謎」というアイデンティティーを捨てた作品だと感じながら読み進めていました。
しかし、今作の推理にはとある重要なアイテム(?)があるのですが、この発想は「日常の謎」を書いている作者だからこそ出たアイデアだと小説の後半に脱帽しました。