第26回鮎川哲也賞を受賞し当時から『そして誰もいなくなった』と『十角館の殺人』を彷彿させるクローズドサークルのミステリー小説と話題になった『ジェリーフィッシュは凍らない』
先月に文庫化されたため購入し夢中になって読むことができました。
個人的にクリスティ作品だと『そして誰もいなくなった』より別の作品を思い出しました。
最後にネタバレあります。
まずは序盤のあらすじ…
今作の舞台は1983年のU国
航空機の歴史を変えた小型飛行船『ジェリーフィッシュ』
UFAの技術開発メンバーは新型ジェリーフィッシュの長距離航行性能の最終確認試験が2泊3日にてが行われます。
試験は順調に進みあと数時間で最終目的地に着きそうな頃、1人のメンバーが死体となって発見されます。
さらに自動航行システムに異常が発生し予定の航路から外れてしまい、手動航行への切り替えもできなくなり、ジェリーフィッシュは雪山に不時着してしまいます。
この小説はレベッカという女性に想いを寄せ復讐しようとする犯人、ジェリーフィッシュ内での技術開発メンバー、事件後に操作する警察、3者の視点で進みます。
明らかに叙述トリックを警戒させるあらすじですが『ジェリーフィッシュは眠らない』は犯人はどうやって?の部分が謎の多くを占めていしてます。
墜落後、明らかに攻撃的になるメンバーと外部犯を疑い冷静になるメンバーとの緊張感はクローズドサークル好きにはたまらないですね。
クローズドサークルを扱った作品として一級だと思います。
ネタバレ感想 トリックは最初に伏せ字
・犯人は書類上、『ジェリーフィッシュ』に搭乗していないことになっている。
・死体の数を合わせるため、書類上の搭乗メンバーをクーラーボックス入れておく。
・実際の試験は2隻のジェリーフィッシュで試験をしていた。
2隻で航行していることを知っているのは搭乗している者のみ。
・元々、殺された被害者のファイファー、ネヴィル、クリスで亡命を企てていて、他のメンバーが乗ったジェリーフィッシュの航空システムを改竄して墜落死させる予定だった。
・上記の計画を把握し航行システムを乗っ取るエドワード。亡命の計画を煽ったもエドワード。
・試験中に5人殺害してクーラーボックスからサイモンを死体を出し、エドワードは残った新型のジェリーフィッシュで逃亡。
犯人は強運、頭回りすぎ。UFAもっとしっかりしようぜ!
冒頭では航行試験報告書のような形で搭乗員メンバーが書かれていて、読者が登場人物を把握しますが、その報告書は犯人がUFA社や捜査する側、読者に対して提出するものでした。
犯人のミスリードが強烈で『そして誰もいなくなったよりも『アクロイド殺し』に似た印象を受けました。
2隻のジェリーフィッシュで試験しているの把握されていないトリックはUFA社が大企業という描写だったので違和感しか感じませんでした。技術開発メンバーはUFA社の社員ではなく独立した協力会社のような書き方だったら納得できたかも?もう一隻あったというトリックは蛇足でしたね。小型スノーモービル使ったり死ぬのは上等で下山のほうがまだいいかも?
別のジェリーフィッシュのメンバーとの会話を通信機器で行い2隻の航行を隠蔽する書き方は巧いです。
不満な点が多くなってしまいましたが、とても面白く読めました。
余計だと感じた点が無かったらただの焼き直しになってしまい、ただの凡作になってしまいますもの。
本当の凡作だったら不満点もなくただ読み終えて感想書く気になりませんよね。